遺産分割協議とは

相続人全員の合意が必要

遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しません。
相続人全員の合意の前提として、遺産分割協議には相続人全員が参加しなければなりません。

あの相続人はこれまでにもたくさんの財産をもらっているから、全く連絡が取れないから、被相続人から嫌われていたから・・など、さまざまな事情があったとしても、相続人全員が参加し、合意をしなければ遺産分割協議は成立したことになりません。

遺産分割協議を行わない場合

相続が生じた場合に必ず遺産分割協議をしなければならないわけではありません。
遺産分割協議を行わなわなかった場合は、法定相続分により遺産は分割されます。

例えば、夫・妻・子二人の家族で、夫が亡くなった場合、相続人は妻・子二人となりますが、遺産分割協議を行わなかった場合、すべての財産が法定相続分=妻4分の2、子各4分の1ずつ、承継されることになります。
これでは不都合であるという場合=法定相続分を修正したい場合は遺産分割協議をする必要があります。
例えば、自宅は妻、預貯金は子二人に分割したい場合は、その旨の遺産分割協議が必要となります。
また、いったん自宅を法定相続分で承継したものとして相続登記を行い、後日、遺産分割協議の結果に基づいて登記を変更することもできます。(登録免許税等の費用は別途必要です)

遺産分割協議がまとまらない場合

遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しません。
相続人全員の合意の前提として、遺産分割協議には相続人全員が参加しなければなりません。
あの相続人はこれまでにもたくさんの財産をもらっているから、全く連絡が取れないから、被相続人から嫌われていたから・・など、さまざまな事情があったとしても、相続人全員が参加し、合意をしなければ遺産分割協議は成立したことになりません。

遺産分割協議書の記載例

※相続人二人の事例です。具体的事件によって記載内容はことなります。

行方不明の方がいる(不在者財産管理人の選任等)


不在者財産管理人の選任

遺産分割協議を行う場合、相続人全員の合意が必要になります。仮に相続人の中に長い間連絡が取れていない人がいるような場合であっても同様です。
しかし、そうするといつまでたっても遺産分割協議ができないということになってしまいます。
そのような場合は、家庭裁判所に行方不明の方の代わりに「不在者財産管理人」の選任を申し立てます。
多くの場合、不在者財産管理人には弁護士が選任されているようですが、この選任された不在者財産管理人とともに遺産分割協議を行うことになります。

なお、不在者財産管理人が選任されたとしても、行方不明者の方の法定相続分の財産を確保する必要はあります。そのため他の相続人の希望通りに遺産分割協議ができるとは限りません。行方不明者の取り分を法定相続分以下とするような遺産分割は認められない運用になっています。
したがって、相続開始後、行方不明者がいることが想定される場合は、あらかじめ遺言書を作成し、遺産分割協議を行わなくてもよいように配慮しておくことも大切です。

失踪宣告

生死の不明が7年以上であれば、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをすることができます。
失踪宣告は、死亡を擬制するものです。つまり、行方不明の方を死亡したものして関係する手続きを進めるものです。
生きていることは確実で、単に音信不通であるという場合は適用できません。

未成年者の方がいる(特別代理人の選任)

日常生活において、未成年者(原則20歳未満)が売買契約などの法律行為を行う場合、親が変わって契約書にサインなどをしています。これは判断能力が未熟な未成年者を保護するために、親が法定代理人となって契約をすることにしているためです。
これは遺産分割協議でも同様です。未成年者の無知に付け込んで未成年者にとって不利な遺産分割の結果とならないようにしなければなりません。
しかし、親と子がともに相続人となり遺産分割協議の対象者となる場合があります。

例えば、夫・妻・子の家族で夫が亡くなった場合、妻と子が相続人です。この場合において子が未成年者であったときに、妻(母)は子の代理人として遺産分割協議をすることができるでしょうか。
多くの親は子にとっても最善の判断をするかと思いますが、もしかしたら「全財産を妻が承継する」といったような親の利益のためだけの遺産分割協議をしてしまうかもしれません。
そうならないために、親と子の利益が相反する(利益相反・りえきそうはん)場合、親に代わる代理人を選任する必要があります。この代理人を特別代理人といいます。
その結果、先の例では妻(母)と子の特別代理人が遺産分割協議をすることになります。

特別代理人の選任は、子の住所地の家庭裁判所に申し立てます。
特別代理人には弁護士等の資格は必要ありません。最終的には家庭裁判所の審判ですが、利益相反に該当しない親族(叔父・叔母など)を候補者として申し立て、その通りに選任されることも多いです。

認知症の方がいる(成年後見人の選任)

遺産分割協議は売買契約と同じ法律行為です。

売買契約を締結する場合にはその契約の内容が理解できる能力=意思能力が必要とされています。その意思能力がなければ、契約の内容が理解できないので契約を締結することができません。仮に形式的に署名やハンコが押されていても意思能力のない者との契約は無効です。

遺産分割協議も売買契約と同じ法律行為なので、遺産分割協議に参加するためには意思能力が必要です。意思能力は成年者であれば有しているとされています。

しかし、認知症などにより成年者であっても意思能力を欠いている場合があります。その場合、成年者であったとしても意思能力がないので遺産分割協議に参加することができません。仮に形式的に遺産分割協議書に認知症の方の署名や実印が押印されていたとしても、意思能力がないので遺産分割協議は無効です。
このように認知症などにより意思能力を欠いている方との間では遺産分割協議ができないので、「成年後見人」を選任することになります。

成年後見人は認知症などにより意思能力がない方(成年被後見人)に代わって、遺産分割協議をはじめとする法律行為を代理することになります。つまり、成年後見人は、未成年者の特別代理人などと異なり、遺産分割協議のためだけに選任されるわけではありません。遺産分割協議などの相続手続きが完了した後も成年後見人はつくことになります。これは成年後見制度が成年被後見人の保護を目的としているからです。

成年後見人の選任は認知症などのご本人の住所地の家庭裁判所に申し立てます。
親族が成年後見人に選任されることもありますが、財産の状況などにより司法書士や弁護士が選任されることも多いです。また、親族が選任された場合であっても、成年後見監督人として司法書士などの専門家が付されることも多くなっています。
意思能力のない方との遺産分割協議は無効なため、成年後見制度を利用することになりますが、成年後見制度は遺産分割協議のためだけの制度ではありません。いったん制度の利用を開始すると事実上ずっとその制度を利用することになります。
制度を利用する前に家庭裁判所のホームページや書籍などによりあらかじめ情報を収集しておくことも重要です。