相続手続きの流れ
相続登記を申請するには下記の図のようにいくつかの作業を経る必要があります。
相続人の確認
相続登記の手続きを始めるにあたり、まず確認しなければならないのが相続人です。
この相続人が誤っていると手続き自体をやり直さなければならない場合もあります。
相続人の確認作業は役所で戸籍等を収集して行います。
必要となる戸籍は亡くなった方(被相続人)の亡くなったことがわかる戸籍を1通取得すればよいというわけではなく、被相続人の方については出生~亡くなるまでの戸籍が必要になります。
詳しくは、相続人調査(戸籍の集め方)をご参照ください。
法定相続分
誰が相続人となり、相続分はいくつになるかについては、ルールがあります。
相続人と相続分のルールは次のとおりです。
- 配偶者は常に相続人となります。
- 配偶者以外の相続人が複数いる場合は、その人数で均等に割ります。
- 配偶者との組み合わせで相続人となるのは次の表のとおりです。
第一順位
第一順位の相続人は、子と配偶者です。
第二順位
子がいない場合、第二順位の相続人は、直系尊属と配偶です。
第三順位
子も直系尊属もいない場合、第三順位の相続人は、兄弟姉妹と配偶者です。
相続財産の確認
相続は、亡くなった方(被相続人)のすべての財産を承継することです。
ここでいうすべての財産とは、預貯金や不動産などのプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産も含みます。
プラスの財産の例:土地・建物・預貯金・株式等
マイナスの財産の例:住宅ローン、カードローン、未払の税金など
不動産の調査
漏れがないように被相続人名義の不動産を確認してください。
被相続人名義の不動産に関して「権利証」や「登記識別情報通知書」が最初の手がかりになります。司法書士事務所の名前が入った封筒や厚紙の表紙が付けられていることが多いです。
また、被相続人あてに毎年5~6月頃に固定資産税の納税通知書が送付されています。そこには、被相続人名義の不動産が一覧になって記載されていますのでとても参考になります。
そのほか、市役所の固定資産税課や都税事務所では「名寄帳」を取得することができます。これを取得することにより、被相続人名義の不動産を確認することができます。
被相続人名義の不動産を漏らしてしまうと、その漏らした不動産だけ被相続人名義のまま残されてしまうことになります。その場合、後日(例えば数十年後)不動産を売却しようとした際に、買主に登記名義を変更することができずに売却自体がキャンセルになってしまうといった事態を引き起こす可能性があります。
ご自宅で市道の持分などをお持ちの場合はお気を付けください。
預貯金の調査
まずは被相続人の口座の確認します。被相続人名義の銀行のカードや通帳が重要な手掛かりになります。
ただ、最近ではインターネットバンキングなどで通帳のない金融機関もあります。そのような金融機関もパソコンの履歴や「お気に入り」、メールでの通知、郵便物などからもわかることがあります。
口座が判明したら、その金融機関で取引履歴などで残高を確認してください。
遺言書の有無の確認
遺言書(ゆいごんしょ・いごんしょ)は被相続人の最後の意思表示です。
遺書(いしょ)とは全く異なるものです。
遺言書の形式は法律によって厳格に定められており、その形式に沿って作成されたものは、被相続人の最後の意思として法的な効力が生じます。
例えば、相続財産の分割方法について定めていれば原則としてその通りに分割されることになります。
遺言書の有無の確認はとても重要です。
遺言書には作成方法によって「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の大きく2種類あります。
公正証書遺言は、公証人によって作成された遺言書です。平成元年以降に作成された公正証書遺言は公証役場で検索することができます。
一方、自筆証書遺言は、被相続人本人が作成した遺言書です。親族に預けていることもあれば、金庫に入っている場合もあります。被相続人が重要書類を保管しておくような場所を確認してください。
また、自筆証書遺言の場合、その遺言書によって相続手続きを開始する前に家庭裁判所で「検認(けんにん)」の手続きをする必要があります。
財産の承継方法
相続財産が確認できたら、相続人は相続財産を承継するか否かを判断する必要があります。
財産承継の方法は次の3パターンがあります。
- 単純承認
- 相続放棄
- 限定初認
単純承認は、いわゆる普通の相続で、被相続人の財産(プラスもマイナスも含めて)すべてを承継します。特別な手続きは必要ありません。反対に被相続人の財産を相続することを前提としたような行為(例えば相続財産を売却してしまったなど)をした場合は、単純承認をしたものとみなされます。
一方、「相続放棄」と「限定承認」は相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。また「相続放棄」は各相続人毎に行えますが、「限定承認」は相続人全員で行わなければなりません。
被相続人の財産が借金しかなく、相続したくないと考えていても、一定の期間に相続放棄などの手続きを取らなければ単純承認をしたこととなります。つまり、借金を相続することになります。相続放棄の手続きの詳細はこちらへ
遺産分割協議
遺産分割協議では、遺産の分け方を自由に話し合うことができます。相続人には法定相続分が定められていますが、それとはまったく違った割合にすることも可能です。むしろ法定相続分とはことなった遺産分割協議がされることのほうが多いです。
遺産分割協議は、法定相続人全員によって行われる必要があります。
法定相続人の中に、行方不明な人(長年音信不通である、誰も連絡が取れない)がいてもその人を除外してすることはできません。不在者財産管理人の選任などの別途の手続きを経て遺産分割協議をする必要があります。
また、遺産分割協議では自分の意思をしっかりと表示できる人である必要があります。未成年者であったり、認知症によって意思表示が難しい人には、特別代理人や成年後見人の選任といった別途の手続きが必要になります。
相続登記による名義変更手続き
法定相続分または遺言・遺産分割協議の結果により相続財産を承継する方が決まった場合、相続財産に不動産があれば名義変更の登記手続きを行います。
相続登記は義務ではありません。つまり、相続登記を行わなくても罰則などはありません。
しかし、相続登記を放置することにより、後日その不動産が売却などができなくなり、塩漬けになってしまうこともあります。
また、「そのうち」と放置している間にさらに相続が生じてしまう場合もあります。
相続登記を含む不動産登記は、物事が生じた時系列通りに登記することになっています。
例えば、A→B→C→Dの順に相続が生じ、現在の登記上の名義がAだった場合、その不動産の名義を一気にDに変更することは原則としてできません。すべての相続に関して登記をする必要があります。これは費用も時間もかかる手続きになるため、いざ売却をしたいといった場合に手続きができないこともあります。
そうならないためにも、早めの相続登記を強くお勧めします。