事例1. 対象となる不動産の名義が被相続人ではない
例えば、今回亡くなった方が父であり、父から相続人である子へ相続手続きを行う場合に、対象となる不動産の名義がいまだに祖父の名義になっているような場合です。
この場合、不動産の名義が祖父から父へ変えていないだけで、実際は祖父から父へ相続されていて、固定資産税の支払いは父が行い、父の兄弟などの親族との争いもないことも多いです。
しかし、父から子への相続手続きを行う際には、祖父から父への相続についても書類を集め、、祖父が遺言をしていなければ、祖父の相続人の協力が必要となってきます。
一度に2回分の相続手続きをするようなイメージです。
遺産分割協議書の内容や、登記手続き自体も複雑になります。
登記申請の方法によっては、登録免許税の額も異なってきてしまいます。
不動産の名義がまだ祖父などの先代名義になっている場合は、専門家へのご相談をお勧めします。
なお、登記名義は登記事項証明書(登記簿謄本)やインターネット登記情報を取得することにより確認することができます。
固定資産税の納税通知書や課税明細書の名義は、書き換えられていることもありますので、必ず上記の登記事項証明書などで確認するようにしてください。
事例2. 対象不動産の登記名義人が亡くなってから時間がたっている
対象不動産の名義人がAであった場合に、例えばAは昭和60年に亡くなっているような事例です。
不動産の名義変更には〇か月以内に登記申請をしなければならない、というような期間の制限はありません。
そのため、登記名義人が亡くなって何年も経ってから登記名義の変更をするような場合もあります。
例えば、対象不動産の売却を検討し始めた際に、登記名義について相続手続きをしていなかったことが発覚することがあります。
相続発生から何年経っていても、基本的に登記名義の変更手続きの方法が変わることはありません。
ただし、登記申請の際に必要となる書類の中身が異なってきます。
上記例で、昭和60年のA死亡当時のAの相続人が妻Bと子CとÐだったとします。
相続当時に手続きをしていれば、多くてもBCDが関与していれば手続きは可能でした。
ところが時が経過し、BやCが死亡していた場合、BやCの相続関係の調査や書類が必要になります。
Cが結婚し子がいた場合や、Bに前婚の子がいるとしたら相続人の判定も複雑になります。
さらにさかのぼって昭和40年代30年代の相続であれば、関係する相続人は20人程度になっていてもおかしくありません。
もっとさかのぼって戦前の名義が残っていたとすれば(全くない事例ではありません)、法律関係も大きく変わっている部分もあるので、専門家でないと対応は厳しいと考えれます。
相続から年数が経っていて、少しでもご不安があれば、専門家にご相談ください。
弊所では、亡くなってから50年近く経過した事案の実績もございます。
まずは、お気軽にご相談ください。
事例3.対象不動産に仮登記がある
「条件付所有権移転仮登記」
「始期付所有権移転仮登記」
「所有権移転請求権仮登記」など、「仮登記」と記載された登記がある場合です。
登記事項証明書(登記簿謄本)に上記のような仮登記という記載があれば、専門家にご相談ください。
仮登記がある場合、対象不動産の登記名義が亡くなった本人になっていたとしても、仮登記の登記内容(登記をした際の契約内容)によっては、登記名義を失ってしまうこともあり得ます。
例えば、祖父が隣地の方と仮登記をしていて、何らかの事情で仮登記がそのままになっているなどという事例多いです。
契約上、すでに効力が失われている仮登記であったとしても、その仮登記を抹消する(登記簿から消す)ためには、仮登記の名義人に協力してもらう必要があります。
仮登記の名義人の方が知っている人であればまだ良いのですが、まったくわからないとか、祖父や父が付き合っていた方で、今は子や孫の代に代わってしまっているというような場合は、スムーズに手続きが進まない場合があります。
だからと言って仮登記をそのままにしておくと、不動産を売却したり、融資の担保として利用することも難しくなってしまいます。
通常、仮登記の付いている不動産に買い手はつきません。
運よく買い手がついたとしても、一般の市場価格よりは低い値段になってしまうことが想定されます。
融資の際も審査が厳しくなると思われます。
仮登記の対応はできる限り仮登記の事情を知っている当事者が行うと手続きがスムーズです。
もし、事情を知っている当事者がすでにいない場合は、速やかに対策をすることが重要です。
事例4.古いローンの登記(抵当権設定登記)がされている
対象不動産に抵当権設定登記があるのは次のような場合です。
1.現在返済中の住宅ローンがある
2.すでに返済が終わった住宅ローンの抵当権を抹消していない
3.債権額「〇円〇〇銭」などと、いかにも古めかしい登記が残っている
1.は、現在のお借入れの抵当権ですので、内容も把握されていることと思います。
住宅ローンの場合、団信(団体信用生命保険)によって借入金が全額返済される場合があります。
この場合は、名義変更登記(相続登記)とともに、抵当権抹消登記をする必要があります。
団信の手続きをする際に抵当権抹消登記の案内もあると思いますので、手続きを忘れないようにしてください。
2.は、返済し終わったはずの抵当権設定登記が残っている場合です。
住宅ローンを組むと、同時に土地家屋には抵当権設定登記が行われています。
その抵当権設定登記は、住宅ローンが完済されれば、法的な意味での役割は終えるのですが、自動的に抹消されることはありません。
完済手続きの際に、抹消に必要な書類が交付されているはずですが、抵当権抹消登記手続きを忘れてそのままになっている例が多いです。
このような場合は、1と同様に名義変更登記(相続登記)とともに、抵当権抹消登記をする必要があります。
ただし、1と違い完済手続きから時間が経っているため、抵当権抹消登記に必要な金融機関から交付された書類が手元にないこともあります。
そのような場合は、金融機関に連絡し、改めて書類を再交付してもらうなどの手続きが必要です。
しかし、必要書類の中には再交付できない書類(登記済証・登記識別情報通知)も含まれています。
また、金融機関の再編などにより、そもそもの窓口がわからない、抵当権抹消登記以外の手続きも必要な場合があったり、再交付できない書類(登記済証)があるため一般的な抵当権抹消登記手続きができないなどの不都合が考えられます。
そのため、単純な名義変更ではなないことから、専門家への相談をおすすめします。
3.は、代々その土地に住まわれており、明治、大正、昭和(戦前)といった古い時代に金銭の借り入れに対して担保設定されていたものが今日までそのまま残っているような場合です。
いわゆる「休眠担保」と言われる登記なのですが、休眠担保では融資している方が個人である場合も多いです。
休眠担保といっても、それを抹消する手続きは、上記1.2と同様に融資している人(亡くなっていればその相続人)とともに、抵当権抹消登記手続きを行わなければなりません。
ただし、あまりにも古いので関係当事者がわからないとことも多いです。
そのため、供託手続を利用しながら抵当権の抹消手続きを進める場合もあります。
専門的な手続きとなることから、専門家への相談をおすすめします。
事例5.被相続人に子がいない場合の相続
亡くなった方(被相続人)に子がいない場合、相続人は配偶者(夫・妻)と被相続人の両親か兄弟姉妹です。
被相続人が高齢だった場合、被相続人の両親も他界していることが多いことから、被相続人の兄弟姉妹が相続人となることが多いです。
さらに、兄弟姉妹も亡くなっている場合、その子、つまり甥姪が相続人となります。
この記事を読まれている方も、被相続人の兄弟姉妹か甥姪の方かも知れません。
遺言がない相続手続きでは、戸籍一式を集める必要があります。
相続人が兄弟姉妹の場合、被相続人の出生から死亡まで、両親の出生から死亡まで、各相続人戸籍などを集める必要があり、相続人の中に甥姪が含まれる場合は、亡くなった兄弟姉妹の方の出生から死亡までの戸籍も必要となります。
兄弟姉妹が多い場合などは集めなければならない戸籍の通数も20通を超える場合もあり得ます。
書類の準備だけでも大変なことから、専門家の利用をおすすめします。
事例6.被相続人に多額の借金がある場合、借金がある可能性がある場合
被相続人(亡くなった方)に多額の借金がある場合があります。
借金も相続財産の一種なので、なにも手続きをしなければ相続することになります。
つまり、被相続人の借金を支払わなければならなくなります。
借金の他に不動産などがあればよいですが、通常、借金のみを相続したい人はあまりいません。
そこで、「相続放棄」の手続きを検討する必要が出てきます。
この「相続放棄」は誤解の多い用語の一つです。
よくある例が、「遺産分割協議書で財産放棄をした」という事例です。
すなわち「私は遺産分割協議によって財産放棄をしたので何ももらわなかった」というものです。
確かに、遺産分割協議では財産承継について自由に決めることができるので、財産をもらわないということもできますし、一般にこのことを「財産放棄」と言っていることも多いです。
しかし、遺産分割協議によって財産をもらわなかったことと、「相続放棄」は全く別の制度です。
しかも、遺産分割協議をすることによって「相続放棄」をすることができなくなってしまいます。
さらに、遺産分割協議をすることによって、財産放棄をしたにも関わらず、借金は相続してしまうことになります。
被相続人に借金がある、もしくはありそうな場合は、安易に遺産分割協議は行わず、専門家にご相談ください。
事例7.相続人が日本各地に散らばっている場合
相続人が日本各地に散らばっているということは、手続きに必要な書類の取寄せも各地から行わなければならない可能性が高いです。
各相続人が時間的に余裕があれば、それぞれの書類を取寄せてくれるかもしれません。
しかし、忙しかったり、いろいろな事情で役所まで行けない方もいるかもしれません。
遺産分割協議書の作成も一工夫が必要です。
そのため、日本各地に相続人がいるよう場合も、専門家を利用するとスムーズに手続きを進めることができます。
弊所では、相続人が遠方にいるケースを受任しておりますので、お気軽にご相談ください
事例8.相続人が海外に住んでいる場合
国際化にともなって相続人が海外に居住していることも珍しくなくなりました。
例えば、父の相続手続きに際して、子が仕事で海外に赴任しているような場合です。
この場合、通常の相続手続きに加え、現地の日本大使館・領事館での手続きが必要になります。
もし、そのような手続きができないのであれば、代替えの手続きを考え、登記所との事前の打ち合わせも必要となります。
特殊な書類も出てくることから、専門家の利用をおすすめします。
弊所では、相続人が海外在住のケースを受任しておりますので、お気軽にご相談ください。
事例9.相続人が外国人に帰化している場合
相続人が外国人に帰化しているとは、具体的には、もともと日本人であった方が、現在は日本国籍を離れアメリカ国籍を取得しているような場合です。
たとえ、日本国籍を離れ外国人になったとしても、相続人であることに変わりはありません。
外国人になると相続資格を失うといったようなことはありません。
反対に言えば、外国人になったからといって、その人を除外して相続手続きを進めることはできません。
したがって、遺言以外の相続手続きには、外国人となった方の書類も必要となります。
具体的には、相続人であることの証明は、日本人であれば基本的には戸籍で行いますが、日本国籍を離れた外国人の場合は戸籍で証明することができませんので、海外現地の公証人などで証明をしてもらう必要があります。
場合によっては登記所との事前の打ち合わせも必要になるので、専門家の利用をおすすめします。
弊所では、相続人が帰化した外国人の事例を受任しておりますので、お気軽にご相談ください。
事例10.被相続人が高齢だった場合
被相続人が高齢だった場合、①相続人も高齢化していたり、②収集すべき戸籍も古いものが多いです。
相続人も高齢化していると、実際に相続手続き(実務的部分を手伝ってあげる)を行うのは相続人の子、すなわち孫世代であることも多くあります。
その場合、孫世代の方は自分の仕事も掛け持ちで行うことから、大変な負担です。
細かな手続きを専門家に振ってしまえば、専門家との窓口業務程度に負担を軽減することができます。
また、高齢の相続人の中には認知症などを患い、遺産分割協議ができない相続人がいる可能性もあります。
そのような場合は、成年後見制度を利用も検討しなければなりません。
また、相続手続きでは被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めなければなりませんが、被相続人が高齢であった場合、その分収集すべき戸籍も古いものになります。
戸籍は現在のものであっても読み取りに時間がかかる場合がありますが、明治・大正時代の古い戸籍は、書かれている文字も戸籍官吏によってまちまちで、中にはかなり達筆なものもあり、読み解くだけでも一苦労の場合もあります。
専門家を上手に活用して、手続きを進めることをお勧めします。
弊所では、日ごろから成年後見人を受任しており、相続手続き・成年後見制度のどちらにもご対応可能です。
お気軽にご相談ください。
なお、相続人の中に認知症などの方がいる場合、生前に遺言の作成などで対策しておくことも重要です。
遺言などの生前対策についてもお気軽にご相談ください。
事例11.不動産を共有名義にしたいと考えている
相続人が複数いる場合、不動産を誰の名義にするかは相続人全員による遺産分割協議によって自由に定めることができます。
例えば、相続人がA・B・Cの場合、3人の遺産分割協議によって不動産の名義をA単独にすることもできますし、ABCの3人共有にすることもできます。
この点、遺産分割は単独での相続が基本と言えます。
すなわち、個々の遺産を相続人が単独で相続できるように分割することが基本です。
上記例ではA単独で相続するほうが基本的には望ましいと言えます。
なぜなら、今後の不動産の活用(売却や賃貸)などを考えたとき、共有であるよりも単独のほうが多くの面で有利であるためです。
ただ、すでに売却の予定がありその売却代金を分配したいとか、相続税の関係で共有にしたほうがいいような場合もあり得ます。
一方、売却予定があったとしても、各相続人の状況によっては単独所有としつつ、他の相続人には他の財産で手当てをしたほうがいいような場面もあります。
なお、相続人には「法定相続分」がありますが、これは「必ず法定通りの相続分で分割しなければならない」という意味ではありません。
中には「法定」という言葉から、上記のように理解をしている方がいらっしゃいますが、冒頭に記載したように、相続分は遺産分割協議によって自由に定めることができます。
相続人が複数いる場合、「平等」を全面に出して安易に共有とするような遺産分割協議を行うと、結果的に各相続人や相続人の子ども世代にまで影響を残してしまうことがあります。
共有については、専門家も活用し慎重にご検討されることをお勧めします。
弊所では、税理士などと連携して適切なアドバイスをさせていただいております。
事例12.忙しい方・いろいろ調べるのが面倒な方
相続手続きについてもインターネットでいろいろ調べることができます。
不動産の登記名義を変更したい場合は、まずは法務局のホームページが役に立ちます。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudousan4.html
上記ホームページには登記申請書のひな型など登記に必要な情報が一通り掲載されています。
とはいえ、各人の事情にあった書類を作成するためには情報不足も否めないので、その他のページや書籍を購入したり、図書館に行って借りたりして調べることになります。
忙しくてそんなことやってられない、そもそも面倒、という方は、専門家をうまくご活用ください。
弊所では、おまかせプランなどをご用意し、ご面倒をお引き受けしております。
お気軽にご相談ください。
事例13.被相続人が会社を経営していた
被相続人(亡くなった方)が会社を経営していた場合もあります。
具体的には株式会社の社長であるような場合です。
社長とは、法律的には「代表取締役」と呼ばれます(株式会社の場合)。
代表取締役の氏名や住所は、商業登記簿に登記されています。
例えば、Aさんが、株式会社ABCの社長(代表取締役)であった場合、株式会社ABCの商業登記簿には、代表取締役としてAさんの氏名・住所が登記されています。
このAさんが亡くなった場合、株式会社ABCの商業登記簿も書き換える手続きが必要になります。
具体的には、代表取締役の変更登記です。
この代表取締役の変更には会社の状況により、株主総会や取締役会の開催が必要になります。
そして、登記手続きには、株主総会議事録や新任代表取締役の方の印鑑証明書なども必要なります。
また、商業登記簿の書換えの場合は期限が定められており、死亡時から2週間以内とされています。
なお、2週間を経過しても登記申請は受理される取扱いですので、期限を過ぎてしまっている場合はなるべく早めに手続きをするようにしてください。
また、Aさんが自宅などの不動産を所有していることも多くありますが、不動産の名義変更は、商業登記の変更登記とは別個行う必要があります。
つまり、会社の社長であり不動産を所有している方は、商業登記も不動産登記も行う必要があります。
特に商業登記は時間的な制約もあり、必要となる書類もケースバイケースであることから、専門家へのご相談をおすすめします。
弊所では会社の設立から役員変更、各種商業登記のご依頼をいただいております。
お気軽にご相談ください。