遺言手続でよくあるご質問(自筆証書遺言と公正証書遺言)
父が亡くなり、その後自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類が出てきました。この場合、公正証書遺言の記載が優先するのでしょうか?

遺言の種類により、優劣はありません。
日付の前後が重要です。
公正証書遺言より後の日付の自筆証書遺言があった場合、あとで作成された自筆証書遺言が、前に作られた公正証書遺言の内容と抵触していれば、自筆証書遺言の内容が遺言者の最後の意思として認められます。
遺言の種類
遺言にはいくつか種類がありますが、そのうち多く用いられているものが①自筆証書遺言と②公正証書遺言です。
各遺言の詳細は別のページに委ねますが、①自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑さえあれば自宅で作成できます。一方、②公正証書遺言は、公証役場に行って証人2名の立ち合いのもと、公証人に作成してもらいます。費用もかかります。
このように、作成方法に違いはありますが、どちらも適法に作成されていた場合、効力に違いはありません。
遺言は書き直すことができる
遺言は作成後、いつでも何度でも書き直すことができます。また、書き直すのに誰の許可も必要ありません。たとえ、公正証書遺言を作成していても、公証人に許可などを得ずに書き直すこともできます。
そうすると、別の日付の異なる内容の遺言書が発見されることもあります。
例)
平成20年1月10日 公正証書遺言 「自宅はAに相続させる」(第1遺言)
平成25年5月20日 自筆証書遺言 「自宅はBに相続させる」(第2遺言)
第1遺言は公証人が作成した公正証書遺言であり、第2遺言は遺言者が自宅で作成した自筆証書遺言です。
発見された遺言書の風情からしても、第1遺言はいかにも遺言書らしく、第2遺言は印鑑は押してあるものの、第1遺言に比べれば見劣りします。
とはいえ、先述のとおり適法に作成されている限り、遺言の種類によってその効力に差はありません。
つまり、公正証書遺言の内容のほうが常にいかなる遺言の内容よりも優先されるということはありません。
上記例では第1遺言では「自宅」をAに相続させるとあり、第2遺言ではBに相続させるとあります。自宅は通常1個ですから、第1遺言と第2遺言は両立しえません。
その場合、死亡時に近い遺言=後に書いた遺言が優先することになります。上記例の場合は、自筆証書遺言が公正証書遺言より後に書かれていますので、自筆証書遺言の内容=「自宅はBに相続させる」が優先されることになります。