相続手続でよくあるご質問(遺産分割協議書・遠方の相続人)
遺産の分割内容を取りまとめたうえ、遺産分割協議書を作成したいのですが、相続人が全国に点在しています。私は千葉県在住で、そのほかの相続人は大阪、札幌、沖縄に住んでいます。
相続登記で使用する遺産分割協議書は相続人全員の押印が必要のようですが、相続人全員が一同に会することは難しいです。
また、大阪→札幌→沖縄→千葉のように遺産分割協議書を順番に送付するのも時間がかかってしまいます。
何か良い方法はありませんか?

遺産の分割の内容については相続人全員の合意が必要ですが、その合意について、必ずしも相続人全員が一同に会する必要はありません。
遺産分割協議書は、必ずしも1通の書面に相続人全員の押印がある必要はなく、同一の内容の書面に相続人毎に押印し、それを相続人全員分そろえることでも足ります。
遺産分割協議
亡くなった方=被相続人の財産を法定相続分以外の割合で相続・承継する場合は、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。
このように遺産分割の内容については相続人全員の合意が必要ですが、その合意の方法については必ずしも相続人全員が一同に会している必要はありません。
相続人間で遺産分割について合意ができれば、それで遺産分割は有効に成立します。
遺産分割協議書
遺産分割は、上記のように相続人全員の合意があれば、それで成立します。つまり、遺産分割協議書という書面を作成しなくても遺産分割自体は有効に成立しています。
しかし、口約束だけでは、後日の紛争の元になってしまいますし、不動産の相続登記を申請する場合は、相続を証する書面の一部として、書面として遺産分割協議書が必要となります。
そのため、遺産分割の協議が整ったら遺産分割協議書を作成しておくべきと言えます。
遺産分割協議書の記載例はこちら(ページ中ほどにあります)
遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議には、相続人全員の署名(記名)・押印が必要になります。その押印なども相続人全員が同居していたり、近所に住んでいればあまり問題になりませんが、遠方にいる場合などは遺産分割協議書への押印が問題になる場合があります。
遺産分割協議書への押印は、1通の遺産分割協議書に相続人全員が押印しても良いですし、同一内容の書面を相続人分用意して相続人毎に押印し、それを相続人全員分揃えても良いとされています。
<<遺産分割協議書への押印パターン>>
①1通の遺産分割協議書に相続人全員がその場で押印する。
→同居していたり、近所に住んでいる場合など
②1通の遺産分割協議書を持ち回りで順番に相続人が押印する
→相続人が遠方に住んでいる場合など
③同一内容の遺産分割協議書を相続人分用意し、相続人毎に押印の上、全員分の書面をそろえる
→相続人が遠方に住んでおり、かつ、相続人の数が多い場合など
③の方法を選択すれば、相続人が遠方に住んでいて、かつ、人数が多くても、比較的短時間に遺産分割協議書を整えることが可能です。
何らかの事情で不動産の相続登記を急いでいる場合などには有効な手段です。
遺産分割協議書の作成上の留意点など
遺産分割協議書の留意点をいくつかご紹介します。
①印鑑は実印を使用
遺産分割協議書に押す印鑑は実印を使用します。また、遺産分割協議書と一緒に印鑑証明書も付けておくと良いでしょう。なお、不動産の相続登記に使用する場合には、必ず実印の押印と印鑑証明書が必要です。
②作成通数
1通あれば足りますが、相続人分を作成すると、各1通ずつ持つことができます。なお、不動産の相続登記に使用しても、原本還付の手続きをすることにより、登記完了後返却してもらうことができます。
③遺産の記載は明確に
分割する遺産は明確に記載し、後日疑義が生じないようにしてください。不動産では住所ではなく土地、建物ごとに次の要領で特定します。
土地:所在・地番・地目・地積 所 在 〇〇市〇〇一丁目 地 番 1000番1 地 目 宅地 地 積 200.31平方メートル 建物:(一戸建ての場合)所在・家屋番号・種類・構造・床面積 所 在 〇〇市〇〇一丁目1000番地1 家屋番号 1000番1 種 類 居宅 構 造 木造スレートぶき2階建 床 面 積 1階 60.25平方メートル 2階 45.89平方メートル 建物:(マンションの場合の例:物件により記載方法が異なります。) 一棟の建物の表示 所 在 〇〇市〇〇一丁目1000番地1 建物の名称 タイガーマンション 専有部分の建物の表示 家屋番号 1000番1の203 建物の名称 203 種 類 居宅 構 造 鉄筋コンクリート造1階建 床面積 2階部分 72.64平方メートル 敷地権の表示 符 号 1 所在及び地番 〇〇市〇〇一丁目1000番1 地 目 宅地 地 積 8500.80平方メートル 敷地権の種類 所有権 敷地権の割合 130万5400分の8000 銀行の口座は、銀行名・支店名、預金の種類(普通・当座など)、口座番号で特定すると良いでしょう。 第〇条 次の預金は相続人〇〇が相続する 〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号12349876