不動産登記手続きでよくあるご質問(団信によるローン返済後の手続き)

主人が亡くなった際に住宅ローンについては団信(団体信用生命保険)によって返済しているはずです。それにもかかわらず、先日登記事項証明書(登記簿謄本)を取得したら、抵当権の登記が残っていました。これはどういうことでしょうか?また、金融機関から追加の支払いなど求められることはないのでしょうか。心配です。

まずは、団信により住宅ローンのお借入れを全額返済されているのであれば、金融機関などから追加の支払いなどを求められることはありませんのでご安心ください。

また、住宅ローンを完済されていても(お借入れ残高がゼロになっても)、お借入時に設定された抵当権の登記は自動的には消えません。完済時に金融機関から交付された書類などを使い、管轄法務局で「抵当権抹消登記」を申請する必要があります。

住宅ローンの完済

住宅ローンをお借入れされる際に、お借入期間中の万一の場合に備えて団体信用生命保険=団信に入ることがあります。

団信に入られている場合、お借入期間中に万一のことがあった際は、住宅ローンの残債はすべて保険で返済されることになっています。

また、住宅ローンをお借入れされた際は、お借入れを担保するためにご自宅に抵当権設定登記をすることが一般的です。この抵当権はお借入れを担保するためのものですから、お借入れがゼロ=完済された場合は不要なものとなります。

ただし、不要となったといっても登記されている抵当権設定登記が自動的に抹消されることはありません。また、金融機関などが法務局へ連絡し抹消してくれるなどという制度もありませんし、お借入時や抵当権設定時とは違い、金融機関が主導して抵当権抹消手続きは行ってもらえないのが通常です。

そのため、抵当権設定登記を抹消するには、完済時に金融機関から交付される書類などと共に、自ら登記申請書を作成して法務局へ抵当権抹消登記を申請する必要があります。

なお、これは団信による返済に限らず、一般的な住宅ローン完済の場合も同じです。

抵当権抹消登記・必要書類

抵当権抹消登記は、登記申請書を作成し、解除証書などの書類とともに管轄法務局へ申請します。

一般的な必要書類・必要な情報は次の通りです。

①登記申請書(各自作成)
②解除証書・弁済証書など(名称はいろいろ(金融機関から交付されたもの))
③金融機関の委任状(金融機関から交付されたもの)
④登記識別情報通知もしくは原契約書または両方(金融機関から交付されたもの)
⑤金融機関の会社法人等番号
※⑤の番号について金融機関からの書類に記載されていたり、金融機関の登記事項証明書のコピーが入っていたりすることが多いです。

法令上、抵当権抹消登記をいつまでに行わなければならないという規定はありませんが、上記③や⑤との関係から完済時からあまり時間が経っていると金融機関から交付された書類では登記できない場合があります。

ご心配の場合は弊所へご相談いただくか、管轄法務局の窓口などでご相談の上、追加もしくは差し替えが必要な場合は金融機関の窓口へお問合せください。

抵当権抹消登記・申請方法・申請窓口

抵当権抹消登記の申請の方法は、①管轄法務局の窓口に申請、もしくは、②管轄法務局への郵送です。

③電子申請(オンライン申請)の方法もありますが、電子証明書が必要なこと、専用ソフトをダウンロードしなければならないことなどから、あまりお勧めできません。

登記費用

不動産1個につき1,000円です。

これは登録免許税という税金ですが、登記申請書に収入印紙を貼ることで納付します。収入印紙は、法務局の窓口で申請する場合、法務局内もしくは法務局の近くで印紙売り場があります。郵送をする場合は郵便局などで購入します。

例えば、自宅の土地・建物に設定されている抵当権を抹消する場合、土地と建物で2個の不動産と考えます。したがって登録免許税は1,000円です。不動産の個数は登記簿の数で考えます。自宅の外見上は1区画に1棟の建物であっても、土地が複数の筆(ふで)に分かれていることもあります。また、建物の敷地以外に私道を持っている場合もあります。その場合は、その分の登録免許税も必要です。

不動産の数については、登記事項証明書を取得して調べるか、もしくは、金融機関から返却された抵当権設定契約書などに記載されている「不動産の表示」「物件の表示」欄の記載を確認すると良いでしょう。

抵当権抹消登記の申請者

ここではそもそもの話として、抵当権抹消登記を申請する人は誰なのかという点についてご案内します。

抵当権抹消登記を含む不動産登記の申請方法の大原則として「共同申請」のルールがあります。

不動産登記における「共同申請」とは、「権利を失う者」と「権利を得る者(負担を免れる者)」が共同して申請するというルールです。
不動産登記手続きでは、権利を失う者を「登記義務者」、権利を得る者(負担を免れる者)を「登記義務者」と言います。

これを抵当権抹消登記手続きに当てはめると、抵当権という権利を失う者が「金融機関」であり、抵当権という負担を免れる者が「不動産の所有者」となります。
すなわち、金融機関が登記義務者、不動産の所有者が登記権利者として抵当権抹消登記手続きを行うということになります。

登記権利者は「不動産の所有者」である点にご留意ください。債務者ではありません。
例えば、自分の借り入れのために、親御さんの不動産を担保に入れていたような場合、債務者は自分ですが、不動産の所有者は親御さんになります。この場合、抵当権抹消登記の登記権利者は債務者である自分ではなく、不動産の所有者である親御さんになります。

では話を戻して、金融機関と不動産の所有者が共同して登記申請をしなければならないことはご理解いただけたかと思いますが、では、金融機関と一緒に登記申請書などを作成しなければならないのでしょうか。

原則論からすればその通りなのですが、さすがにそれは現実的ではないので、金融機関からは「委任状」が交付されているはずです。
委任状の内容としては「抵当権抹消登記手続きに関する一切の件を委任します」といったものになっているはずです。
つまり、この委任状を使って登記手続きをすれば、金融機関と共同して登記を申請したことになります。

そのため、金融機関から交付された委任状は大変重要な書類となりますので、紛失しないように注意し、早めのお手続きをお勧めします。

抵当権抹消登記の前提としての登記

抵当権抹消登記を申請する際に、その前提として別の登記を申請しなければならない場合があります。
具体的には、不動産の所有者の住所・氏名が登記上の住所・氏名から変更されている場合の「所有権登記名義人住所(氏名)変更登記」や、不動産の所有者に相続があった場合の「所有権移転登記」(相続登記)です。

不動産の所有者は「住所」と「氏名」が登記されています。
一方、抵当権抹消登記の申請書には、登記権利者として不動産の所有者の現在の住所と氏名を記載します。この場合に登記上の「住所」「氏名」と、登記申請書に記載した「住所」「氏名」に齟齬がある場合、登記申請を審査する登記官としては、不動産の所有者ではない者から登記の申請がされていると判断して、このまま登記申請を完了させるわけにはいかないという判断がされてしまいます。すなわち、登記が却下されてしまいます。そこで、抵当権抹消登記を申請する前に登記上の住所氏名と現在の住所氏名の齟齬を修正しておく必要があるわけです。また、相続によって所有者が代わっていたという場合も同じです。このような場合は、所有者は一緒だけれど引越や結婚などで住所氏名が変更していた場合は、所有権登記名義人住所変更(もしくは所有権登記名義人氏名変更)登記を、相続によって所有者自体が代わっていたという場合は、所有権移転登記を、あらかじめ申請しなければなりません。

<まとめ>
抵当権抹消登記の前提として必要な登記申請
所有者が一緒だが、住所氏名が変わっていた:所有権登記名義人住所(氏名)変更登記
相続によって所有者自体が代わっていた:所有権移転登記(相続登記)

申請書の作成

登記申請書は、法務省のホームページにひな型がありますので、そちらを参考にしてください。

抵当権抹消登記のひな型:こちら
所有権登記名義人住所(氏名)変更登記のひな型:こちら

また、法務局の登記相談窓口でもいろいろと教えてもらうことができます。
管轄の法務局の相談窓口をご利用ください。
相談窓口は事前予約制の場合もありますので、事前に管轄法務局へお問い合わせください。

なお、電子申請(オンライン申請)の方法は、上記のひな型とは全く異なりますのでご留意ください(ここでの詳細は割愛します)。

ご不明な点はお気軽にご相談ください

その他、完済してから随分時間が経っている、相続登記が終わっていない、書類はあるけどその書類の金融機関はすでに合併などでなくなっている、などなど、抵当権抹消手続きについて、ご不明な点などございましたらお気軽に当事務所までお問い合わせください。

その際、上記必要書類でご案内した書類などをお手元に置かれてお問い合わせいただきますとスムーズです。