相続手続でよくあるご質問(養子縁組をした子と実親の相続)
私には弟と妹がいますが、弟は幼いころ養子に出されています。
父の相続にあたり遺産分割協議を行いたいのですが、養子に出た弟は遺産分割に参加する必要はありますか?

弟さんが普通養子縁組として養子縁組をされたのであれば、お父さんの相続人となりますので、遺産分割協議に参加する必要があります。
普通養子縁組と特別養子縁組
「普通養子縁組(単に養子縁組)」は、養親と養子との合意によりすることがでます。一般的に養子縁組と言えば「普通養子縁組」のことを指すことが多いです。
「特別養子縁組」は、子の福祉の増進を図ることを目的に昭和62年に作られた制度です。普通養子縁組とは違い家庭裁判所の決定により行われます。
両者の制度は様々な違いがりますが、最も大きな違いは実父母との関係(実方との親族関係)です。
普通養子縁組の場合:実父母との関係は存続する
特別養子縁組の場合:実父母との関係は終了する
これは、特別養子縁組は「保護者のない子どもや実親による養育が困難な子どもに温かい家庭を与えるとともに、その 子どもの養育に法的安定性を与えることにより、子どもの健全な育成を図る仕組みである」とされているからです。
なお、特別養子縁組の件数は平成27年で542件です。増加傾向にありますが、一般的に養子縁組と言えば、普通養子縁組と言えます。
以下、養子縁組=普通養子縁組として記載します。
養子に出た子の相続分
上記のとおり、養子縁組をしても実父母との関係はそのまま存続します。つまり、実父母が亡くなれば養子に出た子も実父母の相続人になります。
ご質問の場合、弟は兄や妹とともにお父さんの相続人になります。
そして、相続分は兄や妹と同じです。したがって、相続人が子3人のみの場合、3分の1ずつになります。また、母、子3人の場合、母6分の3、弟を含め子は6分の1ずつになります。
遺産分割協議
遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。そして、養子に出た子も実父母の相続人になります。したがって、養子に出た子も実父母の相続人として遺産分割協議に参加する必要があります。
もし養子に出た子を除いて行われた遺産分割協議は無効です。
相続人の確認方法
相続人は被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍を取得して調査します。その中で、養子として出た子がいたとしても、その子も相続人として考えることになります。
幼いころに養子に出されている場合、相続人など関係者一同がその子を相続人と認識していない可能性もあり得ます。
そのような場合、遺産分割協議自体に時間がかかることもあり、その後のスケジュール(売却など)に影響を与えかねません。
そのため、遺産分割協議を行う前に、しっかりと相続人の調査を行う必要があります。